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ピロリ菌の発見、研究の道のりを紹介します。

歴史

2005年、オーストラリアのウォーレン博士とマーシャル博士がピロリ菌の発見および研究においてノーベル賞を受賞したのは記憶に新しいと思います。しかし、そこに至るまでには長い道のりがあったのはご存知でしょうか。ピロリ菌の歴史についてふれていきます。

らせん状の細菌?

ネズミ1875年、ドイツの細菌学者ベッチャーがらせん状の細菌を発見しました。彼は胃潰瘍の部位に細菌があることを認め、それが潰瘍を形成することについての仮説を示しています。しかし、これが現在のピロリ菌と同じものであったかどうかは判断できません。その後、1892年にはイタリアの研究者ビゾゼロが犬の胃にらせん状の細菌が生息していたことを発表。

これにヒントを得たサロモンはらせん状の細菌をさまざまな動物に感染させる実験を行い、ネズミに感染が成立したことを報告しています。その後もらせん状の細菌に関する研究は散発的に行われてきましたが、病原菌としての意義が解明されるには至らない期間が長く続きました。これは「胃内は酸が強く、細菌は生息しない」という固定観念があったからです。

ついにピロリ菌発見か?

コッホ「胃内には細菌が生息しないであろう」という常識を打ち破ったのは、ベテランの病理医ロビン・ウォーレンでした。ウォーレンは胃炎を起こしている胃粘膜にらせん状の細菌が存在していることを発見。同じ病院にいた臨床医マーシャルとともに研究をすすめ、この菌によって胃炎が起こると考えたのです。ここで、細菌学の父とされるコッホが提唱した「コッホの4原則」を紹介します。ある細菌がある病気の原因であると決定するには、下記すべてを立証しなければなりません。

コッホの4原則

1. その病気のすべての患者にその細菌がいる
2. その細菌は他の病気の患者にはみられない
3. 患者から分離したその細菌を投与すると別の個体に同じ病態が現れる
4. 病気を引き起こした別の個体から、同じ細菌が証明できる

偶然の賜物

「コッホの4原則」を立証させるためにも、2人はらせん菌を分離・培養しなければなりませんでした。さっそく取り掛かるものの、通常の培養方法(48時間)ではなかなか分離・培養せず、失敗を繰り返す日々が続きます。ところが、2人はある偶然によってピロリ菌の分離・培養に成功しました。

それは培養実験がイースターの休日にかかってしまい、培養期間が5日間に延びてしまったときのこと。なんと直径1mmの透明な菌のかたまりが出来ていたのです! まるで、復活したイエス・キリストが2人の努力を祝福したかのような出来事でした。

このことは1983年に発表されましたが、当時はまだ「胃の中に細菌がいる」ということ自体が信じられていなかったため、この菌の存在が広く受け入れられるまでにはさらに数年を費やすこととなります。

ピロリ菌を飲んだ?

男性1984年7月、マーシャルは培養したらせん菌のかたまりを自ら飲み込む・・・という人体実験を行いました。その10日後に行われた検査では胃炎を発症し、そこにらせん菌が存在することも明らかとなったのです。ここで初めて「コッホの4原則」が立証されました。なお、このあと彼は自ら除菌治療をしています。こうして2人は病気との関連や診断法、治療法へと研究を進め、ピロリ菌について少しずつ解明していきました。その後、世界がピロリ菌の存在を認めるようになり、研究は急速に進んでいったのです。

ノーベル医学生理学賞を受賞!

「ヘリコバクター・ピロリ菌」を発見し、その功績が評価された2人は2005年のノーベル医学生理学賞を受賞しました。その際、ウォーレンは次のように語っています。「私が発見するまでは、誰も胃の中に細菌がいることを信じていなかった。そのため、人々が信じるまでには長い年月が必要だった。しかし、私は自分が正しいと思ったので研究を続けたのです」・・・常識を覆すような新しい見識が権威ある学会で受け入れられるまでには、長い年別がかかるもの。ピロリ菌の発見もまたその例外ではないでしょう。

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